クリニック開業の借入金は経費にできるか

医療

借入金と経費

銀行ローンは経費になるか

元本返済と利息を分ける
-開業時の事業借入金-

経営

- 2015.09.30 -

借入金に対する疑問

クリニック開業時には、多額の資金が必要になると思います。
銀行ローン(借入金)によって不足資金を賄うことも多いのではないでしょうか。
このとき、ローンは負の資産としての性質を持つため、経費にできるのでは?という疑問も浮かぶかもしれません。
結論から述べれば、ローン元本の返済は経費にできません。

借入金を内訳を分解してみる

①元本部分

借入金の元本部分は経費にできません。
その理由を銀行側の視点で考えてみましょう。

まず、銀行はお客にお金を貸し付けます。
そうすると、お客の側で費消され一時的にお金は無くなります。
しかし、毎月の元本返済によっていずれ満額戻ってくることになります。
であれば、元本部分については、結果的に価値が費消されたことにはなりません。

他方、お客が倒産して債権回収が出来なくなった場合はどうでしょうか。
このとき、元本が戻ってくることはなく、お金が費消されたままになります。
この場合、当該元本部分の焦げ付きは、銀行にとって損失となります。
他方、債務免除されたお客の方では、利益(債務免除益)が発生します。

以上の性質より、借入金元本部分は、経費となりません。

②利息部分

借入金の利息部分は経費とすることができます。
上記と同じく、銀行側の視点で考えてみましょう。

銀行にとって、お金を貸すことで得られる利益は、当該利息です。
であれば、その反対のお客の立場からすれば、利息=経費となるわけです。
相手が利益と認識するなら、こちらは経費と認識する。
概ね、この考え方で問題ありません。

店舗兼住宅では、一部経費にできる?

クリニックでは自宅兼診療室となる場合があります。
例えば、1Fで診療、2・3Fを自宅、とするケースです。
このときの借入金は経費にできるでしょうか。

1F部分については、問題なく経費にできます。
2F~3F部分については、家事用のため経費にはできません。
しかし、経費とは別概念で「住宅ローン控除」という制度があります。

このとき、住宅ローン控除の要件を満たせば、2F~3F部分の借入を税控除に利用できます。
この控除では、元本部分につき1%の控除を受けることができます。
(例:ローン残高3千万なら、3千万円×1%=30万円)
ただし、合計所得金額が3,000万円超となる場合、適用がないため注意します。

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